マリオネット
 会社にいる間は、仕事に集中するため凪のことを考えている余裕などなかった。三十歳にもなれば、後輩もいるし、指導もしなければならない。後輩が作成した資料に目を通す。二重のチェック、気を抜くとミスに繋がる。

 いつも通り、午前中仕事をこなしお昼休みになった。
 今日は昼食を買いに行ったり、外に食べに行かなくてもいいから楽だな。
 会社のラウンジで一人お弁当の蓋を開ける。
「美味しそう!」
 三食弁当だった。卵、ひき肉、ホウレン草の三色。
 子どもの頃、お母さんがよく作ってくれたことを思い出した。
 朝早くから起きて、頑張ってくれたのかな。
 ひと口食べてみる。普通に美味しい。

 自宅にある私のパソコンを凪が見るかどうかわからなかったが
<お弁当、美味しかった。ありがとう>
 とメールを送った。彼は読むだろうか?

 午後休憩の時にメールを確認してみると
<良かった!夕ご飯は何か食べたいものある?>
 凪から返事が届いていた。
 なんか、私が旦那さんで凪がお嫁さんみたい。
 お昼はお肉だったから
<お魚が食べたい>
 と送った。

 特にアクシデントなく、仕事も終わり定時に帰れそうだった。

「お疲れさまでした」
 上司に挨拶をし、帰宅しようとすると
「あれっ。今日は早いね?」
 という言葉をかけられた。

 定時上がりなんだから、普通なのに。
「はい。今日は特に残りそうな案件が無かったので」
 そう作り笑いをし、会社を後にした。
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