マリオネット
 私に残業でも頼みたかったのかな。
 電車に乗りながらそんなことを考えたが、私は自分の仕事が終わっているので関係ないと割り切ることにした。

 自宅マンションを見上げると、電気が点いていた。
「ただいま」
 玄関を開け、中に居るであろう凪に声をかける。
 不思議。自分の家に帰って「ただいま」なんて言うなんて。

「おかえり!」
 そう声が聞こえ、凪が玄関に迎えに来てくれた。

「荷物、持つから。お疲れ様」

 彼はニコッと笑い、私の仕事用のカバンを持ってくれる。
 朝会ったばかりなのに、こんなにかっこ良かったっけ?
 思わず見つめてしまう。
「どうしたの?」
「ううん。なんでもない」
 私も部屋の中に入る。

「えっ……!!」
 部屋の中を見て、驚愕した。
 すごく綺麗になっている。
 散乱してた物もないし、なんか整頓されている。 埃とかもない気がする。

「ごめん。勝手に触ったりするのもどうかと思ったんだけど。掃除して良いって言われたし、机とか動かして、全部掃除機かけたり、整頓してみた。あ、物はそんなに動かしてないからね?とりあえず、カーペットとか布団とか洗濯して、コインランドリー行って乾かしたり。貰っている生活費の中で考えてやってるから、それは安心して。空気も入れ替えしたし……。ダメだったかな?」

 ダメではないけれど。
 私が長年放置していた埃とか汚れとか、彼はそれを見てどう思ったんだろう。
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