マリオネット
 私が部屋を片付けたのなんて、男性を連れ込んだ時くらい。しかも隠す感じで掃除なんてほぼしなかったのに。

「ありがとう。ダメなんかじゃないんだけど……」
「ないんだけど?」
 彼は首を横に傾げている。

「私のこと、嫌いになった?ダメな女だと思ったでしょ。相当汚かったし……。埃とか大丈夫だった?」

「陽菜乃さん、仕事頑張ってるんだから、ちょっとくらい出来ないところがあったってしょうがないじゃん。それにここ半年くらい、精神的にも安定してなかったでしょ?仕方がないよ。俺の一昨日くらいの格好に比べたら、全然綺麗だし。掃除するの俺の仕事だから、気にしないで。そんなことで、陽菜乃さんのこと幻滅するわけないじゃん」
 彼は明るくそう言った。

「そんなことよりさ、先にお風呂入る?ご飯食べるなら、ご飯の準備するけど……?」

 凪のパーフェクトすぎる回答に
「もうダメだ。可愛すぎる。いい子いい子したい」 という欲求に陥ってしまう。
「凪?」

 私は彼の名前を呼び、人差指でちょいちょいと指示を出し、近くに来るように呼んだ。
「なに?」
 抵抗なく私の近くへ彼は来てくれた。

 私は背伸びをし、肩と彼の首に手を回しキスをした。
「ん……」
 不意を突かれたキスに、彼の声が漏れた。

「ありがとう。すごく嬉しい。キスしちゃってごめんね。思わずなんか……。いい子いい子したくて」

「……俺、一応、成人の男なんだけど。陽菜乃さんからキスのご褒美、貰えるように頑張るね?」

 目を細める彼に、男性らしさを感じてしまった。
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