マリオネット
「ありがとう」と伝え、とりあえず上にいる彼を抱きしめた。

「キス以外は本当にされてない?」
 私の胸の中で控えめに聞いてくる彼。

「されてないよ。もしされてたら、凪に上書きしてもらうから」
 先程の彼の言葉を使う。

「うん」
 あっ、大人しくなった。良かった。

「明日も仕事だから、お風呂入ってくるね。凪、先に入る?」
「ううん。俺、後でいい」

 彼の言葉に甘え、先に入ることにした。
「うわぁ、ピカピカじゃん!」
 浴室も脱衣所も掃除されている。
 後で、お礼を言わなきゃ。

「お風呂、ありがとう」
 髪を乾かした後、リビングにいた彼に声をかける。
「うん。次、俺入ってくる。俺が入っている間、何かあったらちゃんと言うんだよ」
 さっきのことで過敏になっているのか、不安そうな顔をしていた。

「わかった。ちゃんと言うよ。あっ、凪、浴室と脱衣所、すごく綺麗になってたよ。頑張って掃除してくれたんだね!えらいえらい!」

 まるでお手伝いをしてくれた子どもを褒めるように、ワシャワシャと頭を撫で回した。

「ちょっと!陽菜乃さん、俺の仕事だからそんなの当たり前だし」
 私の頭を撫で回すのを困りながらも受け入れてくれる彼。やっぱり可愛い。

「部屋も綺麗にしてくれたし、何かご褒美をあげたいんだけど、欲しい物ある?あっ、あんまり高い物はダメね?」

 凪はしばらく考えて
「お風呂に入りながら考えてくるね」
 そう言って私から離れた。
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