マリオネット
「陽菜乃ちゃんは、僕のなんだ。ほら?また美味しい物食べに行こう?奢ってあげるからさ。あの時、美味しいって言って食べてくれたよね。すごく可愛かった。僕は着飾ってない、今の黒い髪の陽菜乃ちゃんも大好きだよ」

 あぁ、怖い。怖い。どうしよう。

「ごめんなさい」
 田中さんに謝り、私は家に向かって走り出した。

「待って!逃がさないよ!」
 田中さんが私の後ろから走って来るのがわかる。

 そうだ。私、走るの遅かったんだ。
 そして、ヒールの靴が走り辛い。
 振り返ると、すぐ後ろに田中さんが見えた。

 もうダメ、捕まってしまう。

 その時
「はい。終わりにして」
 その声と同時に、田中さんの足音が止まった。

 この声
「凪!?」
 凪が田中さんの腕を掴んでいた。

「なんだ、お前か。離せよ」
 その口調……。
 田中さんはやはり凪を知っているみたいだった。

「離すわけねーだろ。陽菜乃さんに怖い思いさせやがって」
 二人は互いに睨み合った。
 凪の言葉遣いがいつもと違う。

「陽菜乃ちゃんは、僕のなんだ。それをお前がいきなり現れて……」
 離せといわんばかりに、田中さんは凪の手を振り払おうとしている。

「はいはい。わかりました。菅野株式会社、課長の田中さん」
 凪の言葉に、田中さんは動きが止まった。
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