マリオネット
「ああっ!!」
 なんとか挿ったけど、痛い。彼が腰を動かしてくる。痛い、痛い。
 気持ち良いなんて、一ミリたりとも感じない。早く終わってほしい。

「あっ、あんっ……!!」
 嘘の喘ぎ声を出す。
「陽菜乃ちゃん、可愛いよ」
 
 私が声を出すと、大抵の人はこう言ってくれる。
 この言葉が聞きたくて、我慢する。
 パンパンパンと身体が交差する音が室内に響く。

「あっ!」
 早く終わらないかな……。
 心の中ではただそれだけ。
「あっ、もうイキそう……」
「いいよ」
 そう言った瞬間、彼はすぐイってしまった。

 良かった、今日は早かった。

「陽菜乃ちゃん、ありがとう。気持ち良かった」
 誰かに感謝されることは嫌いではない。
「ありがとう」と言われたいがために、誰かに結局は尽くしたいがためにこんなことをしているのかも。

 これを考えると、頭の中がグチャグチャになってしまう。
 一人でいたくないから、遊んでくれる人を見つける。遊んでくれるなら何かしてあげなきゃ可哀想、だから私は身体を預けるの?
 
 ああ、考えるのが面倒。
 とりあえず、惨めな女だ。
 これじゃあなんでも言うことを利く、操り人形(マリオネット)みたい。

 ホテル代は、彼が出してくれた。
「じゃあね。今度またデートしよ」

 そう言ってくれるなら、せめて駅まで送って行ってよ。

 時間は二十三時を過ぎていた。
 こんなラブホテルが並んでいる通り、治安が悪い繁華街の真ん中で女性を一人で帰らせるの?
 もうこの人とは会わない。

 ふと、スマホを見る。
 LINNにメッセージが届いていた。

※LINNとはこの作中だけの無料通話アプリのこと。
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