黒百合の女帝
 彼女は一切悪くないのに、邪推は膨らむばかり。

彼氏を優先するなんて、誰でもそう。当然だ。

誰も責められない。俺が勝手に嘆いているだけ。

なのに、幼稚な俺は彼女に牙を剥いてしまう。

そんな自分への嫌悪で、拳を握りしめた。

 「ラクア……どうしたの?」

 「ユリだって、イヤリングを外しただろうが」

その呟きで、場は険悪な空気に支配される。

ユリは俺の豹変ぶりに、困惑した様子だ。

俺だって驚いている。言ってしまうのかと。

湧き出る感情を抑えようと、腹式呼吸を試す。

しかし彼女の一言で、全てが台無しになった。

 「ラクア、大丈夫?ごめんね。もしかして……私の所為?」

今更、俺の辛さを理解したのか。

ずっと、俺がどんな思いでユリと居たか。

どれだけユリの為に、自己を制御していたか。

今まで胸中に押し込めていた想いが、喉から迫り上がってくる。

全身が冷や汗をかいていた。自分が恐ろしかった。

でももう遅い。だって、既にどうしようもない程に

 「俺はユリが好きだ」から。

そう言い切った途端、喪失感に襲われる。

ずっと隠していた感情を、吐き出してしまった。

これで俺も、もう彼女の側にはいられない。
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