黒百合の女帝
 「でもね、ラクアは最初っから信用できたんだ。」

 「は……?なんで俺なんだ?」

そう問えば、彼女は少し考える素振りを見せる。

 「多分、ラクアは私に無関心だったから。思い出してみてよ。下心も同情もない、完全なる無視!」

当時を思い出したのか、笑い声を上げるユリ。

面白おかしくしてくれているが、実際はもっと酷い。

二ヶ月前の黒歴史を思い出し、両手で顔を覆う。

 「当時のことは本当に、心の底から申し訳なく思ってる。忘れてくれ」

 「忘れてあーげないっ。でも、私からしたらそれが救いだった。」

そう言うと、彼女はコートのポケットを探る。

何かと思えば、彼女の掌には二匹の海月が。

俺もそれに倣い、ポケットから海月を取り出す。

 「ラクアだけが信頼できた。だから、好きって言ってくれて嬉しかった。」

 「じゃあ、返事は……」

そう問えば、彼女は左耳に海月を下げた。

それだけで、答えはもうわかったも同然。

 「ごめんね。まだ、恋心は芽生えてないみたい。でも、今後どう転がるかは……ラクア次第かな。」

語尾に音符マークでも付きそうな、軽快な返事。

彼女の左耳には海月が、右耳にはリングピアスが垂れ下がっていた。
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