黒百合の女帝
 「はっ!?離せやっ、女のくせにイキっとんちゃうぞっ」

 「時間ないから。」

そう話す前から、私は男を放り投げていた。

腹に靴をめり込ませると、白い服が土で汚れた。

ばたつく男を眺めつつ、次の行動を計画する。

救急車が来るまで、あと数分はあるだろうか。

どうせ治療されるんだし、ちょっとくらい。

そんな思いで、男の顎を殴り飛ばした。

男は簡単に意識を失ったが、また起きるだろう。

掴みっぱなしの腕は落とし、その場に放置した。

入り口付近から奥へ向かい、彼に声を掛ける。

 「お疲れ様。怪我はない?」

 「大丈夫だ。ユリこそ、何もなかったか?」

 「私は大丈夫。救急車は呼んでおいたから、逃げちゃおっか。」

ラクアの手を取り、共に飲み屋街を抜ける。

走っている途中、救急車とすれ違った。

しかし何食わぬ顔で、私たちは街を後にした。
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