黒百合の女帝
 「でねでね、不思議なのはこのあと!」

対策を講じていれば、頭に響く溌剌な声。

その声に、私とカヤが同時に振り向く。

ハラは少々間を開け、嬉々として口を開いた。

 「嶺春は立て続けに、反嶺派の倉庫を巡った。んだけど……ぜーんぶもぬけの殻だったんだよねえ!」

彼はそう語ると、勢い良くソファに沈んだ。

私からすれば、確かにそれは不思議な話だ。

嶺春の広い包囲網を潜り抜けて逃げる。

それには相当な情報量と計画性が必要な筈だ。

しかし情報不足なカヤは理解不能という様子。

 「普通に合図を送ったんじゃないのか?逃げるように」

首を傾げ、呆れたような目を向けるカヤ。

それに対し、ハラも似たような態度をとる。

 「それがねえ、獄覇はどことも同盟を組んでないはずなんだよ」

 「同盟を組まなきゃ、連絡も厳禁ってか?」

 「アホだね〜。獄覇は馴れ合うタイプじゃないの」

カヤはそんな説明に、再び首を傾げた。

当然だ。ハラは細部を省き過ぎている。
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