黒百合の女帝
雅side

 一月も半分を切った今日、時刻は午後五時。

本の頁を捲りつつ、時計を気にする。

あと三分でも遅れたら、席を立ってやる。

そう考えたのだが、相手は一分後にやってきた。

本を閉じ、こちらに向かってくる男を見返す。

陰湿な奴だと思っていたばかりに、その煌びやかさは意外だった。

第一印象との差に訝しむが、僕の正面に腰掛けることは許した。

 「君がノーム?想像と違って爽やかだね」

 「そうですか。それで、要件はなんでしょうか。」

形だけの敬語を使えば、相手は苦笑を浮かべる。

しかしその笑みは、たちまち不敵なものに変わった。

 「君が情報を提供している、反嶺派消失事件の真犯人について教えてくれたらなって」

彼は僕の犯行を知っている。

それを否定したところで、事態は変わらない。

否定もせず黙っていれば、男がスマホを取り出す。

向けられた画面には、例の会話履歴が表示されていた。

見覚えのある赤いスマホを確認した後、微笑みかけてみせる。

 「お名前は?レト以外でお願いします。」

 「なら、ぜひともヤナギって呼んで」
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