黒百合の女帝
 なにかと顔を上げれば、視界に入る人影。

眉間に込めた力を抜き、それを目で追う。

男に見えるそれは、廃校に吸い込まれていった。

一部始終を見届け、ヤユに画面を見せる。

 『中を見てくる。できたら音声も。もしバレたら二人で戦おう。念の為、麓冬の幹部をできる限り呼んで。無理なら下っ端でも良い。』

ヤユは眼を左右に動かし、文章を読む。

そして読み終わると、私の腕を掴んだ。

必死に首を横に振っているが、手で制す。

お願いね、と口の動きで伝え、腰を上げた。

怯えるヤユを一人残し、廃校に近づく。

窓際に居たら会話も聞こえるのだが……。

低い校門を飛び越え、建物の壁に触れる。

丁度その辺りに、バイクが何台も並んでいた。

それを凝視しながら、どう動くかを考える。

まずは校舎の周りを一周して、位置を探るか。

一階以外や音楽室、壁際でない場所は難しいが。

一階の壁際にいると信じ、探ってみよう。
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