黒百合の女帝
 「いやっ、待ってくれ、くよくよしないから」

 「ふうん。じゃあ改めて、何?」

椅子に座り戻し、彼の前で初めて足を組む。

するとユウヒは遠慮がちに口唇を動かした。

 「単刀直入に訊くが、ユリは……無実なのか?」

彼の問いは、即答すべきものではなかった。

息を整えてから、体の前で腕を組む。

 「何において?」

 「サクラが話した、例の……ユリがサクラを虐めたという話において」

声を潜めつつ、私の様子を伺ってくるユウヒ。

そんな彼を見つめた後、軽く瞼を閉じる。

次に目を開けた時には、突き放すと決めていた。

 「私は散々、あの時に否定した筈だけど。」

私の回答に、立派な総長様が口唇を噛む。

彼の長い睫毛が、その眼を覆い隠した。

 「そうだよな。すまない、ユリを疑った俺が全部悪いんだ」

 「別に。サクラを信じるならそれで良いんだよ。」

ストローに口を付けながら、そう言い放つ。

すると突然、ユウヒの悲愴な顔付きが一変。

今度は総長に似つかわしい、精悍な顔付きになった。

 「いや、俺は総長として、二人を公平に扱う」

躊躇のないその姿は、見覚えのあるものだった。

いつしかの、夕日に照らされた彼を想起する。

私と彼が出会ってすぐの、住宅街での記憶だ。
< 439 / 605 >

この作品をシェア

pagetop