黒百合の女帝
 それからおよそ十分後。

色取り取りの服が並ぶ中、一着を手に取る。

俺が選んだのは、白ニットのボレロだった。

これなら元からセットだったように見える。

その上、暖かいクリーム色も季節にぴったりだ。

 「これなら形も綺麗ですし……」

 「じゃあそれにしようか。」

俺の評価を遮り、服を取り上げるユリさん。

その動作は、心底興味がないという様子だった。

実際、試着すらせず会計に持って行っている。

それを不満に思うと同時に、不思議にも思う。

彼女の服装は、常にトレンドを押さえている。

なのに、お洒落には興味がないとは。

意外に思えば、一瞬にして戻って来たユリさん。

その手には、上着の入った紙袋が握られていた。

 「買ってきたけど。このコート返すね。」

 「ああ、わかりました。というか、俺が払うべきだったのに……」

チェスターコートを羽織りつつ、そう呟けば。

彼女はこれまた平然とした様子で、首を傾げた。

 「今日はカヤの誕生日だよ?それに、寒いのは私の問題だし。」

 「えっ、いつものユリさんなら俺に払わせるのに!」

 「私を知った気でいるならとんだ勘違いだよ。」
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