黒百合の女帝
 などと考える間にも、彼女の声が耳を通り過ぎていく。

どうやら、俺の美点について話しているようだ。

意識を聴覚に移すと、高い声が頭に入ってきた。

 「私、ユウヒさんに助けて貰って、すごく嬉しかったんです。救われたんですっ」

そう言うと、彼女は力んだ状態で瞼を閉じた。

どうやら、俺の返事を待っているようだ。

それを確認し、まばたきの瞬間で謝罪を考えた。

その謝罪は、彼女の期待を裏切る事への詫びだった。

 「その、すまない。俺はその気持ちに応えることが出来ない」

余計な慰めも理由もない、必要最低限の返事。

それを受け、彼女は静かに目を開けた。

瞼の奥から現れた眼は、酷く沈んで見えた。

 「勿論、嫌いだからなんて理由じゃない。ただ、俺が誠実じゃないだけ。俺が悪いんだ」

事実を伝えるだけで、喉が締め付けられる。

泣きたいのは向こうの方だ。

彼女との仲が壊れたって、全部俺のせいだ。

考えてもみろ。俺と彼女が付き合うことを。

どうせ、また肝心な時に守れなくて終わりだ。

それに加え、俺は彼女を今この瞬間も疑っている。

そんな奴、恋人になる資格さえない。
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