黒百合の女帝
 『およそ半世紀ぶりに国内パンダゼロへ』

ネット記事を読み、初めてパンダ不在を知った。

手元から顔を上げ、動物園の入り口を一瞥する。

本物が居ないのなら、置物も撤去すれば良いのに。

スマホを鞄に仕舞いつつ、周囲を見回す。

すると見覚えのある飾りを提げた青年が。

片手を挙げてみると、駆け足で近付いてきた。

 「すまん、待たせた」

 「ううん。動物のこと調べてたから。まず待ってないし。」

定番の気遣いをし、共に列へ並ぶ。

それにしても、ラクアを見るのは久々だった。

倉庫には来ない為、五日ぶりの再会か。

 「というか、動物園なのに海洋生物のピアスしてるの面白いね。」

 「それはユリもだろう。なんなら腕時計は天体だ」

 「それも二人に言えることだよ?」

雑談を交わしつつ、開園時間を待つ。

雑談を始め、30分後。遂に列が前に進み出した。

事前に購入していたチケットを見せ、中に入る。
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