黒百合の女帝
養育の還元
 「カケルくん、麓冬を抜けたいらしくて……」

春休みが終わり、高校三年生となった四月。

麓冬倉庫では、ヤユが震えた声で報告していた。

そんな彼を心配するように、眉を顰めるカヤ。

対照的に、ハラはヤユをからかっていたが。

三人の様子を見ながら、損失について考える。

確か、カケルは特別訓練を受けさせて約一ヶ月。

 「ヤユ、カケルの実力は大体どれくらい?」

 「嶺春のみんなよりも遥かに上だと思う。ポジション与えられる寸前くらい」

なるほど、必要だが必須でもないな。

カケルのアドバンテージはその若さにある。

もしヤユたちが去っても、世代交換が可能だ。

だが、そんな奴いくらでも代わりが居る。

カヤも同じなのか、ヤユを咎めはしなかった。

 「損失はあるが、本人の自由じゃないか?」

 「そうじゃなくて……カケルくんは移籍したいらしくて」
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