黒百合の女帝
 「厄介だね。嶺春で教育されちゃ強敵になるかも。」

 「カケルは相当吸収が早かったらしいからな。なあヤユ」

カヤに問われ、涙を拭いながら頷くヤユ。

泣き止まぬヤユを傍目に、三人で議論を交わす。

 「取り戻すのもめんどいね〜。俺とユリ、ヤユくんの存在を隠さなきゃ」

 「でも、まだカケルは向こうに行ってないんだろ?」

 「止められる段階だとは思うけど。カケルはなんで移籍したいの?」

そう尋ねれば、息を吸おうと吃逆を起こすヤユ。

彼は呼吸を落ち着かせた後、その訳を話し出す。

 「嶺春のっ、人にあこがっ、たらしいですっ」

 「え〜推し変ってこと?カヤさんどんまーい」

 「憧れの人?幹部か?」

カヤが怪訝そうに訊くが、かぶりを振るヤユ。

落ち着いてきたのか、その言葉は安定していた。

 「教えて、くれなくて……」

なるほど。嶺春はカケルに釘を刺しているのか。

それにしても、懸念が事実になってしまうとは。

この四ヶ月間、手塩に掛けて育ててやったんだ。

恩を仇で返させる様な真似は、絶対にさせない。
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