黒百合の女帝
 午後九時になり、居酒屋の中に入る。

目的の男は、店内の端の方で飲んでいた。

手を振りながら男へ近づき、向かいの席に座る。

 「久しぶり。元気にしてた?」

 「ああ、少なからず飯は食えてたよ」

ラクアにタコ殴りにされてたくせに?

聖矢の自慢げな表情に、早速胸中で悪態を吐く。

私が弟を殴った女だとまだ気付いていないのか。

そう呆れながらも、飲み物を注文した。

再び聖矢と顔を合わせ、ふと感心する。

四ヶ月間で、ここまで回復しているとは。

ラクアも多少は手加減したのだろうか?

それらしい雑談をしながら、タイミングを探る。

本題に入ったのは、入店から30分後だった。

 「そういえば、私の友達のいとこが聖蓮に居たらしいんだけど」

 「へえ、なんて名前の奴?」

 「苗字は佐川さんなんだけど……そうだっ!カケルくんっ」
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