黒百合の女帝
 突然出た名前に、聖矢の手の動きが止まった。

彼が動揺を取り繕う前に、畳み掛けて質問する。

 「私、その友達の家庭環境が心配で。何かありそうなんだけど、全然話してくれないの。」

あの年でぐれているなら、事情持ちなのだろう。

取り敢えず、一番多い家庭環境に賭けてみるか。

 「聖矢はカケルくんからなにか聞いてない?」

 「いや……いとこの話は聞いたこともないな」

 「踏み入った質問だけど、カケルくんのお家はどうだった?」

 「あいつの家は……まあ事情があるみたいだったな」

ああ、やはりそうなのか。

しかし、これだけではまだ情報が足りない。

濁した返答を寄越す聖矢に、媚を売る事にした。

 「どういう事情なの?お願い、友達の為なの。」

従弟の家庭環境から何がわかるというんだ。

とも思うが、聖矢はなぜか納得したらしい。

彼は考え込むと、決心したように口を開いた。
< 481 / 605 >

この作品をシェア

pagetop