黒百合の女帝
 「俺がなんでお前に麓冬を薦めたと思う?」

 「は?暇そうな俺に痺れを切らしたんでしょう?」

 「そうだな。でも、それだけじゃない」

そう言うと、俺に顔を近づけてくるヤナギさん。

瞳孔の見えない黒眼が、彼に未知の畏怖を与えた。

見たことのないヤナギさんに、怯えてしまう。

その眼から目線を逸らすが、恐怖は離れない。

彼は俺の耳に顔を近付け、耳元で呟いてきた。

 「ああいう連中が、こっちにはうじゃうじゃいんだよ。お前はそれも知らずに来るつもりだったんだろ?」

恐怖の所為で、彼の言葉を処理するのに時間が掛かった。

何度も彼の言葉を想起し、目を見開く。

 「ああいう連中……?誰のことを言ってるんですか」

 「さあな。そんな能天気で三木さんの息子ってのが信じられねえな」
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