黒百合の女帝
 そこまで話した時、側から服が擦れる音がした。

何かと振り向けば、そこには屈み込んだユリさんが。

その優しい眼差しに、突然動悸が激しくなる。

毛布を頭から被り直し、リセットしようとした。

なのに、握られた片手に縋りたくなって。

右手の薬指に嵌めた指輪同士がぶつかり合う。

その冷たさと手の温もりに、背を丸めた。

 「カヤ、何かあったの?」

天から降ってきたと錯覚しそうな、柔らかい声。

こんなの、狡い。本当にユリさんは酷い。

わかってる筈なのに、口からは弱音が漏れる。

 「ヤナギさんと……喧嘩しました」

なんだ、そんなこと。

そう言ってください。いつもの、平坦な口調で。

じゃないと、いよいよ堕ちてしまう。
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