黒百合の女帝
 彼女は振り向くなり、私の腕を掴んできた。

突然のことに抵抗する暇もなく、彼女は服の袖を捲る。

その瞬間、ずっと隠してきた傷が露わになった。

それらは父に幼少期から付けられてきた傷だった。

 『ユリちゃん!?あっ、もしかして勘違いしてる?これはね、私が鈍臭くてできた傷で……』

 『父親?母親?同級生?まあ、なんだって良いけど。』

私の言い訳に被せてきた、その声は。

聞いた事がない、冷たいものだった。

今の声を出したのは、ユリちゃんなのか。

目の前の光景が受け止められなくて、思わず凍りついた。

そんな私の腕を離すと、彼女はくすりと笑って見せた。

いつもと明らかに違う様子に、思わず後ずさる。

 『ユリちゃん……?』

 『私ね、サクラが入ってきて嬉しかったんだよ。』

そう言うと、突然ユリちゃんにお腹を蹴られた。

予想外の事態への衝撃と、悲しみと、混乱とで。

頭が真っ白になって、いとも簡単に倒れてしまった。
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