黒百合の女帝
 その翌日、10月3日の土曜日。

ユリちゃんは、あっけなく嶺春から去った。

私に傷跡が増えることはなくなり、安寧が訪れた。

信じられなかった。平穏な毎日が、夢のようで。

ヨウもいる。ユウヒさんもいる。みんないる!

私は、なにも失わなかったんだ!

そんな考えは、単なる平和ボケだったのだと。

今、冷たい床にへたばって、ようやっと気づいた。

ユリちゃんは、復讐を成功させた。

私にはもう、何も残っていない。

大切な場所も、大切な人たちからの信用も、安寧も。

全部、彼女に壊されてしまった。

ユリちゃんは悪い子だ。正真正銘の悪魔だ。

やっぱり、何倍にもしてその恨みは返ってきた。

でも、もう反論もできない。抵抗もできない。

そんな気力、どこにも残っていない。


 もう一度顔を上げ、みんなの様子を見てみる。

ユウヒさんからの信用は、全部なくなったかな。

ヨウも、もう私から離れて行っちゃうのかな。

ヤユくんは、最初っから私を信じてなかったのかな。

ミヤビさんは、一生その目で私を見てくるのかな。

ユリちゃんは、これから私をどうするんだろうな。

全部、どれもこれも全部、私のせいなのかな。

冷たいフローリングには、いつしか彼女に壊されたバレッタが落ちていた。
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