黒百合の女帝
 「小路(しょうじ)さん、私がチョコムース好きなの覚えててくれてたの!?」

 「モエのことならなんだって覚えてるってば」

ハラと話をした、その翌日。

対して美味くもない店で、食後のチョコムースにそう叫ぶ。

それを嬉しそうに食べれば、男は相好を崩した。

50手前のこの男は、小路という名だった。

先週から私の登下校を狙い、ストーキングをしている男だ。

小路はバレていないとでも思っているのだろうか。

気色の悪い笑みに唾を吐きたい気分だった。

 「そういえば、来週は用事があって早く出なきゃいけないの。ほんと最悪。」

 「そうなの?早起き苦手とか?」

 「そうなんだよねえ。しかも用事の後は普通に学校に行かなきゃで……」

 「へえ、じゃあ、モーニングコールしてあげよっか?」

気持ち悪いから辞めてくれ。

と言いたい気持ちを堪え、媚び諂った笑みを浮かべる。

 「本当!?それなら絶対起きれる自信あるよ!」

 「まあ、俺も起きてるかわかんないけどね」

起きてるだろ、毎朝七時から付けてるんだから。

内心そう吐き捨てるが、笑みは絶やさなかった。
< 586 / 605 >

この作品をシェア

pagetop