ひまわりみたいなあなたにもう一度恋をする~再会したのは元不良の同級生~
「高校に入学する直前、親父が再婚して弟が生まれたんだ。弟が生まれてからは一気に邪魔者扱いされて、親に褒められる優等生でいるのが急に馬鹿らしくなった」
「それで金髪に?」
「あれで反抗した気になってたんだ。恥ずかしいだろう?」
「そんなことないよ」
十年越しに知る正宗の家庭事情に驚きを隠せない。彼にそんな葛藤があるなんて知らなかった。
「『綾辻くんに私の気持ちはわからない』って突き放されたとき、その通りだって思った。俺は無意識に親に甘えていたし、自分の正しさを押し付けて、肝心の錦の気持ちを考えられていなかった」
正宗はひまわりのように真っ直ぐ未来だけを見つめていた。
「過去は変えられないけど、未来は変えられる。そう思ったから、つまらない意地を張るのはやめたんだ」
そう語る横顔は真剣そのもので、彼がどれだけ真摯に自分と向き合ったのかわかる。
「そろそろ車に戻ろうか」
「うん」
夜の高校見学を終えたふたりは再び、車に戻った。その車中、美織は正宗が過ごした十年間に思いを巡らせた。
(綾辻くんは凄いな)
自分の未熟さを受け入れ、変わろうと努力したのだろう。たゆまぬ自己変革が今の彼を形作っている。