黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない

 帰国後は、これまで通り習い事に精を出す生活に戻っている。

 自宅にいるときの彼はやっぱり私をかまいたがり、それでも寝室を別にするというルールはきっちりと守る。
 けれど、額や頬に口づけて抱きしめてもくる。

 楢村さんに操を立てているのかと思いきや、そうとも言いきれない振る舞いに困惑してばかりだ。

 ただ、スキンシップは多めなのに唇へのキスは一度もない。そのあたりが、光毅さんなりの線引きなのか。
 大人な彼にとっては、それくらい大した接触ではないのだろうか。仕事というのなら、許容できる範囲なのかもしれない。

 私ばかりが光毅さんに翻弄されて、いいように彼の手のひらで転がされている気がしてならない。

 平日の昼下がり。そんなことを考えながらぼんやりと情報番組を眺めていたら、糸貫庵周辺が取り上げられていることに気づいてハッとする。

『この番組で以前紹介したときは、反対派と意見が対立しているため計画が暗礁に乗り上げるかもしれない状況にありましたが……』

 すでに一度、報道されていたなんてまったく知らなかった。

『混乱した中で、なんと素敵なラブロマンスが生まれたようで』

 それまでとは打って変わって、女性アナウンサーが明るい口調で話し始める。彼女が口にした言葉に、ギクリと体を強張らせた。

 まさか私たちの話かと恐る恐る耳を傾けて、間違いなくそうだと確信した。
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