黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「ラブロマンスって……」

 その言葉のチョイスが恥ずかしい。

『それって、敵対していた同士っていうことですよね?』

 コメンテーターのひとりが、目を見開いて驚きの声をあげる。なんだか芝居がかった物言いで、内容がより大げさなものに思えてくる。

『困難を乗り越えて結ばれたなんて、素敵ですね』

『うらやましいです』

『まさしく、シンデレラストーリーですね』

 テレビ画面に移されたスタジオは、私のシンデレラストーリーにすっかり心酔しているように見せている。まるで私たちの出会いを運命的なものだと、印象づけようとしているみたいだ。

 私と光毅さんに間に、人から憧れられるようなものなど実際にはなにもない。彼は、仕事をスムーズに進めたいという思惑から動いているだけ。そのための手段が、私との結婚だ。

 あらためて考えると、胸が苦しくてたまらない。私だってどんな手を使っても、糸貫庵を残したいと願っていた。

 だから、お互いさまだ。

 そのときがきたら、離婚を申し出る。もしくは、先に彼の方から別れを突きつけられるかもしれない。

 最初からそのつもりで結婚に応じたというのにと、ままならない現実に大きくため息をつく

 結婚なんて、しなければよかった。

 いつのまにか話題は移り変わり、スタジオは海外の有名俳優のゴシップで盛り上がっている。さっきまで純愛だなんだと囃し立てていた空気は、もうまったくない。

「いつまで一緒にいられるだろう……」

 結婚を決めた当初は、いつ別れられるだろうかと早々から指折り数えていた。
 今では、その日が来るのが怖くてたまらない。

「好きになりたくなかった」
 
 光毅さんは酷い人だ。そうわかっているのに、彼に対する想いは今でも日に日に大きくなり、私を一層苦しめ続けた。
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