黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「ほら、行こう」
指定された場所には、すでに人が集まり始めていた。
「社長」
女性の声に呼び止められて、そろって足を止める。
「お疲れさまです」
「お疲れ」
楢村さんだ。
「お久しぶりです、依都さん」
「今日はよろしくお願いします」
私に向けても笑みを見せた彼女に、小さく会釈をしながら返す。少し顔が引きつってしまったかもしれないけれど、楢村さんが気にした様子はない。
「この後のセレモニーで、社長にも簡単にお話ししていただくことになります」
「ああ、わかっている」
「今日は地元の方もたくさんいらしているのと、メディアもいくつか入っています。社長の挨拶の際には、奥様も一緒に登壇をお願いします」
つまりふたりがそろっているところを見せて、宇和島リゾートと地元との関係のよさをアピールしたいのだろう。
彼と私の結婚は、前にシンデレラストーリーとしてテレビで取り上げられていたくらいだ。自分が思っている以上に、広く知られているのかもしれない。
光毅さんにとってこれはまたとないチャンスで、大いに利用したいに決まっている。それに糸貫庵を残すという約束を守ってもらえているのだから、私だって役割はきっちりと果たすつもりだ。
ただ……と、楢村さんをチラッと見る。
仕方がないとはいえ、彼女に思うところはないのか。私への好意すら感じる微笑みからは、彼女の真意は読み取れなかった。
指定された場所には、すでに人が集まり始めていた。
「社長」
女性の声に呼び止められて、そろって足を止める。
「お疲れさまです」
「お疲れ」
楢村さんだ。
「お久しぶりです、依都さん」
「今日はよろしくお願いします」
私に向けても笑みを見せた彼女に、小さく会釈をしながら返す。少し顔が引きつってしまったかもしれないけれど、楢村さんが気にした様子はない。
「この後のセレモニーで、社長にも簡単にお話ししていただくことになります」
「ああ、わかっている」
「今日は地元の方もたくさんいらしているのと、メディアもいくつか入っています。社長の挨拶の際には、奥様も一緒に登壇をお願いします」
つまりふたりがそろっているところを見せて、宇和島リゾートと地元との関係のよさをアピールしたいのだろう。
彼と私の結婚は、前にシンデレラストーリーとしてテレビで取り上げられていたくらいだ。自分が思っている以上に、広く知られているのかもしれない。
光毅さんにとってこれはまたとないチャンスで、大いに利用したいに決まっている。それに糸貫庵を残すという約束を守ってもらえているのだから、私だって役割はきっちりと果たすつもりだ。
ただ……と、楢村さんをチラッと見る。
仕方がないとはいえ、彼女に思うところはないのか。私への好意すら感じる微笑みからは、彼女の真意は読み取れなかった。