黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「……はあ」

 しばらくして、祖父が重いため息をついた。

「相談くらいはしてほしかったが、仕方がない」

「小さな頃から、依都は妙に頑固だものね」

 頑固なんて言われるのは心外だと見回すと、祖母も由奈も首を縦に振っていた。

「糸貫庵は、今はまだ黒字経営ができている。だが、今後はどうなるかわからない。とにかく、依都や由奈の代に借金だけは絶対に残さないようにする」

 暗に旅館を手放す未来もあるのだと仄めかされて、どうにかしたいともどかしくなる。
 けれど、それも承知の上だ。

「おじいちゃんが決める引き際を、絶対に邪魔しない」

 祖父がここまだと決めたときが来たら、潔く手を引く。でもそうならないように私にも手伝わせてほしいと、必死で気持ちを伝えた。

「わかった。依都の思うようにやってみなさい。ただし判断が必要な場面では、必ず相談すること」

「もちろん。ふたりとも、認めてくれてありがとう。私、がんばるから」

 私の主張を受け入れてもらえて、大きく安堵する。
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