黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「だ、だって、私ではあなたに釣り合わないし、役割はもうほとんど果たせたじゃない」

 そっと体を起こした光毅さんが、私の顔を覗き見る。

「依都がほしいと、最初に伝えたはずだ。お互いの立場など関係ない。それに、役割とはなんのことだ?」

 彼と楢村さんの親密な関係も、ふたりの交わしていた会話も、私が知っているとは思っていないのだろう。

「そ、その、光毅さんは再開発を円滑に進めたかったのかなって」

 間近からじっと見つめられると、逃げ出すことも許されない。

「仕事ありきの結婚ではないと、言ったはずだぞ」

 彼が悲壮な顔をしなくなったのはよかったが、今度はなぜか私に怒っているようで焦ってしまう。

「で、でも……」

「ずっと、依都はなにかを隠しているようだと感じていた。結婚を申し込んだとき時点で依都は俺を好きだったわけでもないから、関係はゆっくり築いていけばいいと思っていたが、いつまで経っても一線を引いていた」

 身に覚えがありすぎて、反論はできない。

「無理強いはしたくないから、強引には出なかったが」

「あ、あれで!?」

 思わず声をあげて、しまったと口を手でふさぐ。
 そんな私に、彼は片方だけを眉を上げて不満をあらわにした。

 だって光毅さんは、隙があれば私を抱きしめたり唇以外の場所にさんざん口づけたりしてきた。自宅でくつろいでいるときはいつもくっついていたし、外でも手を握って離さない。

 今だって、多少体を離しているとはいえ彼の腕は私の背中に回されたままだ。遠慮のかけらも見当たらないと思うのは、絶対に気のせいでないはず。
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