黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「好きな女が手の届くところにいれば、触れたくなるのは当然だろ」

 肌を重ねるのは悪いことでも怖いことでもないと、少し掠れた声でなだめるようにささやく。

 光毅さんはよくくっついてくる人だと思っていたけれど、いつの間にかそれが当たり前になっていた。それどころか彼の温もりを感じていると安心感を抱き、心地よくなる。

 彼が出張でいない夜は、なんだか心細くなる。ときには楢村さんとの関係を疑って気分が沈む。
 それでも帰ってきたときはとにかくうれしくて、思わず小走りで玄関まで迎えに行くほど。
 
 私、光毅さんのことを好きすぎるんじゃない?と今さらながらに気づいて、さらに頬が熱くなった。

「その顔は、俺を受け入れたと取っていいな?」

 どんな顔をしているのかと不安になるが、ここで逃げてはなにも始まらない。

 この人を手放したくないのは私も同じだ。物理的にも精神的にも、光毅さんにもっと近づきたい。そうして、彼が私のものだと安心したい。

 彼の着ているジャケットをそっと掴む。

 変な顔をしていたら恥ずかしいけれど、それでも自分の気持ちをちゃんと伝えたくて彼と視線を合わせた。

 羞恥に震えながら、コクリと小さくうなずく。

 一瞬目を見開いた光毅さんは、それから額に口づけて再び視線を合わせた。
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