黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 それからの私は、由奈の付き添いや雑務をこなす合間に、集客を目指してなにができるかを常に考えていた。
 時間が許す限り、大和とも膝を突き合わせて話し合う。

「例えば女性向けにオシャレな浴衣をレンタルできるようにして、街歩きを楽しんでもらいたいんだけど……予算的に厳しいかあ」

「話題性としても弱いんじゃないか。今は散歩がてら楽しめる店も減っているし、そもそもそういうのを楽しむのは主に俺たち世代だろ? この年代の利用客はそれほど多くない」

 もっともだとうな垂れた。
 私が実家に戻って一週間が経っているが、具体的な方策はまだなにも見つけられていない。

「温泉ならではの卓球大会の開催……は無理だってわかってる。言ってみただけ」

「まあ、利用客の年齢層を考えればな。それも若い世代の客を集められるようになってからだな。今は地域ぐるみのイベントもできないし」

 以前なら温泉地が一体となって花火大会を開いたり、複数のお店を回るスタンプラリーを企画したりできていた。
 でも再開発で揺れる上に、反対派だけで行うにしても数が集まらず実行は難しい。

「それよりも、糸貫庵のよさをもっと広めていったらどうだ? 詳しい水質とその効能を知ってもらうとか。ホームページでの紹介の仕方を工夫するだけじゃなくて、余裕があれば駅や電車のつり革広告を出すとか」

「さすが大和。想像だけの私と違って、ここで働いているからこその意見は貴重だね」

「肌にいいとか、若い世代が興味を持ちそうなところを前面に出して」

 よさそうな意見に、うんうんとうなずいた。
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