黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 説明会当日になり、鏡の前で身だしなみを確認する。

「よし!」

 これまでの説明会で激しすぎるほどの言い合いになったことはないと聞くが、初めて参加する身としては不安がある。
〝簡単に丸め込まれるな〟という大和の言葉に反発はしたものの、本当にその通りだ。
 自分の覚悟を示そうと、今日は着物を選んだ。いわば戦闘服のようなものだ。

「おお、着物にしたんだ」

 祖父母に声をかけて行こうと旅館の裏口を開けると、休憩時間だった大和に出くわした。

「なんとなくね。気合が入るから」

 セミロングの髪は、サイドを簡単に編み込んで低い位置でお団子にまとめてある。
 着物だと、自然と背筋もピンと伸びるし、身長が低めの私もこれで少しは大きく見えるかもしれない。

「よく似合ってる」

「ありがとう」

 女性を褒められるようになったのねと、弟の成長がうれしくて小さく笑う。

「馬子にも衣裳だな」

「なんですって?」

 前言撤回。大和は生意気な子どものままだ。

「拗ねるなって」

「拗ねてなんていない。怒ってるの!」
< 21 / 178 >

この作品をシェア

pagetop