黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 説明会以降も、なんとしても糸貫庵を守りたいと奮闘を続けた。

「温泉の効能については、旅館のホームページでこれまでより大大的に紹介はしてみたけれど……」

 仕事を終えて自宅に戻ってきた祖父母に、ここまでの様子を報告する。

「それを見たって言ってくれる人は、何人かいたんだよ。でも、年代的にインターネットにそれほど触れない人も多いみたいで」

「私たちの世代は、そうかもしれないわね」

 そう返してきたのは祖母だ。

「そもそも常連の客の多くは、インターネットではなくて電話で予約を入れてくれるのよ。きっとホームページを見たこともないんじゃないかしら」

 言われてみればそうかもしれないと、祖母の指摘にがっくりとする。

「やっぱり、今後は若い年齢層の客を取り込んでいかないといけないよね。子や孫の世帯と一緒に出掛けようとなると、きっとインターネットで検索すると思うし」

 悔しいが、宇和島リゾートの提案は間違っていない。新しい企画を打ち上げても、それを目に留めてもらえなければ不発に終わる。結局のところ、この温泉街に興味を持ってもらわないことにはなにも始まらないのだ。

「うちも、数は多くないけれど外国の方もいらっしゃるわ。言葉の問題や宗教の関係で食べられない食材があるとか。そちらの対策もしていかないと」

 ホームページが日本語のみで掲載されているのもあり、外国からの客はまだ少ない。糸貫庵の発展を考えたら、そのあたりも早急に改善していくべきだ。

 悩みは次から次へ出てくる。大和や療養中の由奈ともどうしていくべきか話をしているが、これといった打開策がない。
 私たちの間では日に日にため息が増え、手詰まりな感じが強くなっていった。


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