黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 混み合う電車に乗り込み、ドアの近くの手すりにつかまってぼうっと窓の外を見つめる。

 建物が密集する息がつまるような都心を抜けると、次第に自然が増えていく。十一月も後半に差し掛かり秋が深まってきた今は、徐々に紅葉が始まっていた。

 景色から意識を反らし、電車の窓ガラスに映る自身を見つめた。

 愛嬌のある顔立ちをしていた母に似た私は、くっきりとした二重瞼に少し大きな目が印象的だと友人らに言われる。
 ふっくらとした頬は、よく『赤ちゃんのほっぺみたい』とふざけて指で突っつかれている。加えて身長も平均より少し低めなせいで、初対面の人には必ずと言っていいほど実年齢より下に見られがちだ。

 それに比べて由奈は、昔から美人女将と有名だった祖母に似ている。彼女は、涼しげな目もとにすっと鼻筋が通ったはっきりとした顔立ちをしている。細身で身長は平均より少し高く、学生の頃からすっかり大人びて見えた。

 私たち姉妹が並ぶと、必ずと言っていいほど由奈の方が姉だと思われる。大好きな妹と比較されても、恨んだり妬んだりという感情は湧かない。ただ、自身の容姿はコンプレックスになっていた。
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