聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「君が、バズドント伯爵令嬢?」
「ど、どうしてあたしの名前を……!?」

 仮面舞踏会は、無礼講だ。
 会場内で相手の素性を詮索するのは褒められた行いではない。
 ルイザが思わず大声で聞き返せば、男性は口元に右手の人差し指を当て、左手であるものを差し出した。

「これを、渡したくてね」
「あたしの髪飾り……!」

 彼に手渡されたそれは、ルイザが好んで身につけていたアクセサリーだった。
 それに見覚えがあると声を上げれば、男性は愛おしそうにこちらを見つめて告げる。
 
「ああ……。やっぱり君が、そうなんだね……。僕の天使……」

 彼は意味不明な言動を口にすると、微笑みを深め――ルイザの耳元で囁いた。

「準備が出来たら、必ず君を迎えに行くよ。だから、待っていてほしい」
「あ、あなたの名前は……?」

 男性は仮面を手に取ると、一瞬だけそれをずらして素顔を晒す。
 ルイザは口元を両手で抑え、彼の名を叫びたくなる気持ちをぐっと堪えた。

(フラティウス・べグリー!)

 こちらに声をかけたのは、この国の王太子であり――喉から手が出るほど、欲している男性だった。
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