聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「クロディオ、不可能を可能にする男。弱音、似合わない……」
「どんな困難な状況においても諦めずに立ち向かう。それは自分だけではなく、部下の命を守る必要があるからだ。こいつと仲良くならなくとも……」
「もっと、自分。大切にして」
「それは……」
「約束」

 天使は辺境伯の口答えを、けして許さなかった。
 桃色の瞳に有無を言わせぬ光を宿したこちらの姿を見れば、彼も拒絶などしようという気にならなかったのかもしれない。
 彼はどこか困ったように目元を和らげると、ぽつりと吐き出した。

「セロンはおとなしいように見えて、強引なところがあるな……」
「控えめなほうが、いい?」
「いや……。俺はありのままの君が好ましい」

 クロディオの口から好意的な言葉が紡ぎ出されたことに、セロンはこのうえない喜びに満たされた。

(嬉しい……)

 天使は満面の笑みを浮かべて、彼に己の気持ちを伝える。

「わたしと、一緒」
「ああ……」

 辺境伯は金の瞳を優しく和らげると、己の頬を挟んでいた手を大きな指先で掴む。
 そのあと口元まで持ってくると、薬指に口づけた。
 まるで、セロンは自分のものだと態度で表すかのように――。
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