聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(バズドント伯爵、か)

 聖女天使が残した1枚の羽根と髪飾りを手にして、記憶を頼りに仮面舞踏会の会場を練り歩く。
 ――そうして、フラティウスは見つけた。

『僕の天使……』

 最愛の天使に声をかけて呼び止め、王太子はバズドント伯爵家の娘に約束する。

『準備が出来たら、必ず君を迎えに行くよ。だから、待っていてほしい』

 冷静になってみれば、1度目に出会った聖女天使と彼女の違いは明らかだった。

 髪色や体型、声音。
 身につけているドレス――。

 いくら目元を仮面で覆い隠しているとはいえ、誰がどう見ても2人は別人だ。

(僕は何度目かわからぬ、過ちを冒した)

 もしも、思い焦がれる聖女天使が銀髪だったと記憶していれば。
 もしも、彼女の名を聞いていれば。
 もしも、もしも、もしも――。

(ああ、僕はなんて……。愚かだったのだろう……)

 自らが冒した罪に気づいた時、フラティウスは膝から崩れ落ちた。

(人違いをして、愛する彼女を傷つけるなど……!)

 深い悲しみに包まれている場合ではないと考え直して涙を拭うと、己を奮い立たせる。
< 169 / 245 >

この作品をシェア

pagetop