聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(あの子にだけ任せきりは、悪いから……っ)

 セロンはクロディオの腕に囚われ、ここで待っていればいいとわかっていても――。
 異変を見て見ぬふりなどできず、彼の手から逃れようとしたのだが……。
 それを愛する人が、許すはずがない。

「どこに行くつもりだ」

 低い声でセロンを呼び止めたクロディオは、先程までの上機嫌な様子などどこへやら。
 苛立ちを隠せぬ低い声で、天使が己の腕から抜け出ていかぬようにきつく抱きしめた。

「あの、ね? 集団で、聖女天使。浮遊していて……。ペガサス、様子、見に行った」
「そうか」
「わたし、も……」
「行かせない」
「クロディオ……」
「セロンは、俺と一緒にいるんだ。誰にも渡さないし、手放さない。絶対に……」

 天使に対する強い独占欲と執着心を見せつけた彼は、瞳を潤ませて懇願するセロンの望みを棄却する。
 2人は長い間、永遠とも呼べる無言の言い争いをしていたが――。

「辺境伯! いらっしゃいますか!」

 執務室に姿を見せた第三者によって、その無駄ないざこざは終わりを告げた。
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