聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「嫉妬?」
「悪いか」
「かわいい」

 2人はここが敵陣であることも忘れ、互いを見つめ合いいちゃつき始めた。
 そんな辺境伯と天使の姿を見れば、他人が入り込めないほどに強い絆で結ばれていると王太子も察したのだろう。
 フラティウスは呆然とした様子で、声を震わせた。

「どうしてそんな男なんかに……! そいつの手は、血濡れているんだぞ!?」
「彼の手が汚れたのは、命をかけて人々を守っているから」

 反論しかけたクロディオを手で制したセロンは、かつて信じてみようと思った異性と対峙する。
 その表情は、愛する人の前で見せた微笑みからは想像もつかないほどに――冷え切っていた。

「あなたみたいに、口先だけの……。自分勝手な人間とは、違う」
「僕は君から、そんな風に称される人間じゃない……! セロンだって! 僕と初めて出会った時は! 待っているって、約束してくれたじゃないか! なのに! どうして……!」
「そう。わたしは、あなたを好きになれそうだった」
「ならば……!」
「でも、今は違う。わたしの一番大切は、あなたじゃない」

 愛する天使から無表情で淡々と拒絶の言葉を紡がれたなら、王太子も受け入れるしかなかったのだろう。
 彼は必死に頭を振って天使が口にした拒絶を受け入れたくないと駄々をこねると、涙を流しながらセロンに問いかけた。
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