聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「うおおお!」
「俺達、生きてるよ……!」
「聖女天使、万歳!」

 喜びを噛みしめる部下達の姿を目にした彼は、尻尾を巻いて逃げ出した敵陣の去りゆく姿を見送り――安全が確認されたあと、ようやくその場に佇んでいた少女に視線を移す。

(疑問は尽きないが……。こんなところで質問責めにしても、いいものなのか……)

 ルユメール王国で生まれた聖女天使は、本来であれば神殿で厳重に管理される。
 神聖なる存在だ。
 ロセアガンム国出身のクロディオが気軽に話しかけられるような存在ではなかったのだが……。

(このまま彼女を置き去りにするわけにも、いかんだろう……)

 辺境伯は四方八方から攻撃を受ける、危険な戦地のど真ん中だからだ。

(聖女天使を傷つけ、神に恨まれても困るからな……)

 彼は失礼を承知の上、重い口開く。

「なぜ、敵に塩を送るような真似を……」

 彼女はクロディオの疑問には、答えなかった。
 ガラス玉のような感情の読み取れない桃色の瞳を彼に向けると、こてりと首を傾げて告げた。

「あなたはわたしを、必要としてくれる?」

 天使の奥底から純粋に沸き起こった問いかけを耳にして、どう答えるか悩む。
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