聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(彼女達は、誰もが喉から手が出るほど欲しがる宝石だ)

 神に愛されし愛し子の住まう地は、永遠の富と平和を約束される。

(どのような理由で人里まで降りてきたのかはわからんが――)

 パロニード騎士団は、天使の加護がなければ壊滅状態に追い込まれていたのだ。
 彼らにとって彼女は、いわば命の恩人。
 無下に扱うなど、許されない。

「君が俺達に、勝利を齎してくれるのなら」

 クロディオの返答を耳にした天使はコクリと小さく頷き、鈴の音が鳴るような美しい声を響かせた。

「――あなたと、一緒に生きたい」

 先程まで物言わぬ骸のように淀んだ瞳をしていた彼女は、いつの間にかその目に強い意志を宿らせる。

(彼女はなぜ、俺を頼る……?)

 天使と今日初めて出会ったばかりのクロディオは、彼女の考えていることなどさっぱり理解できなかったが――。
 目の前にいるのが、得体の知れない化物であったとしても……。
 クロディオの答えは決まっていた。

「君がルユメール王国に、強い恨みを持っているのなら――俺は、君を信じる」

 彼は差し出された小さな手に、自らの指先を絡め合う。
 離れないように、強く。
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