聖女天使を苦しめた国に、天罰を

 それから2人の間に、取り立てて特別な出来事は起きなかった。
 クロディオは黙々と書類の整理を行いながら、時折尋ねてくる騎士団の団員達に指示を飛ばす。

「団長! 支援物資の到着が遅れています!」
「倉庫の貯蓄庫から、不足分を充填しろ」
「はい! ところで……」
「なんだ」
「そちらの目麗しい女性は……?」

 団員は地べたの上に布を敷き、セロンと並んで座る辺境伯の姿に疑問を感じたようだ。
 恐る恐る紡がれた質問を受けても眉一つ動かさず、彼は淡々と部下を追い返す。

「気にせず、仕事に戻れ」
「失礼いたします!」

 どうやらクロディオは、聖女天使を保護して匿っていることを周知したくないらしい。

(騒ぎになるの。嫌、だから……?)

 長年存在を秘匿されて生きてきたセロンにとって、来客が訪れるたびに「隠れていろ」と命じられた伯爵家の暮らしよりはよほどマシだ。
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