聖女天使を苦しめた国に、天罰を
「ここ……。人が住む、場所……?」

 バズドント伯爵家の地下室に閉じ込められていたセロンは、人間達がひしめき合う場所に訪れた経験が、数えるほどしかなかった。
 だからこそ不安そうにあたりを見渡し、ルセメルに問いかける。

「大丈夫ですよ。何があってもセロン様は、私がお守りいたしますから!」

 天使は暫く、視線を忙しなく動かして逡巡するような様子を見せていたが――。

(いつまで経っても、ここで佇んでいるわけには……。いかない、から……)

 最終的に、侍女を信じると決めたようだ。
 セロンは全身を小刻みに震わせながら、ルセメルとともに賑わう街へ足を踏み入れた。

「よってらっしゃい、見てらっしゃい!」
「辺境伯騎士団の勝利を祝して!」
「今日は、安売りの日さ!」

 セロンが目にしたのは、露天商達が大声を張り上げて客引きをしている姿だ。

「うーん。やっぱり、逆転勝利を決めたあとだからですかね? すごく、盛り上がってます!」
「ちょっと、騒がしすぎる……かも……」
「そのうち慣れますよー!」

 たくさんの人が賑わう光景を目の当たりにした彼女は、露骨に顔を顰めて片耳を塞いだ。
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