知らない明日が来たとしても
5.
 目を覚まして自室の天井を見つめているうちに、夢を見ていたことをゆっくりと思い出す。
 暁と初めて話した時の記憶。
 研修が終わってから少しずつ連絡を取り合うようになって、二人で食事に行く仲になった。
 相変わらずやりたいことは見つからないと言っていたけれど、新しい分野を経験していくことは楽しいと言っていて、仕事自体は充実しているようだった。
 ある日、俺もいつかマーケティングをやりたいんだと言われた時は、あの時暗い表情で投げやりになっていた彼の姿が蘇って、少しだけ泣きそうになった。
 
 まだ覚醒し切らない頭の中で、暁の笑顔が繰り返し浮かぶ。
 笑っている彼が好きだった。
 あんな顔をさせたいわけじゃない。
 昨夜の別れ際の彼の表情を思い出して、意識が現実へと急激に戻されていく。
 起き上がり、ベッドに腰掛ける。
 カーテンの隙間から昼の強い光が漏れているのを見て、眠り過ぎてしまったことを後悔した。
 
 昨夜、暁と離れてから居酒屋に戻ったけれど、そのまま彼と話すこともなく解散してしまった。
 疲労とは別の何か重たいものが体全体に伸し掛かってくるような気がして、才佳は咄嗟に仕事用の鞄に手を伸ばす。
 メールチェックをしようとノートパソコンを開きかけて、しばらく手を止めた後、また鞄へと仕舞い込んだ。
 立ち上がってカーテンを開き、光に目が慣れた頃、視界に広がる青空を眺める。
 今日は逃げない。
 そう決めて、才佳は出掛ける準備を始めた。
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