知らない明日が来たとしても
◇
何もしないという時間を作ったのはいつぶりだろうと思いながら、公園のベンチに腰を下ろす。
少し離れたところにある遊具には子供連れが集まっていて、こちらまで賑やかな声が聞こえて来ていた。
近くのカフェで買ったコーヒーを口に含んだ後、ここ最近の出来事をゆっくりと思い出す。
崇人には家族がいたこと、そのまま曖昧な関係を続けてしまっていること、そして――暁から思いを打ち明けられたこと。
仕方ないと分かっていながらも、暁の気持ちに全く気付けていなかったことを考えると胸が痛む。
崇人と付き合い始めたことを伝えた時。食事をしながら紹介した時。『良い人だな』と笑って応援してくれた時。
暁は一体どんなことを思っていたのだろう。
そんなことを考えていた時、不意にスカートの裾を引っ張られた。
驚いてその方向を見やると、小さな女の子がこちらを真っ直ぐに見上げていた。
「ねえ、おねえちゃん。えまのママ、しらなぁい?」
小首を傾げて尋ねてくる様子に、直感的に迷子だと分かった。
「ええと、ママいなくなっちゃったの?」
「うん、あっちから走ってきたの。そしたらねぇ、ママいなくなってたの」
あっち、と指差した道の方向には誰もいない。
周囲を見渡しても、誰かを探しているような人は見当たらなかった。
交番に連れて行こうかと思ったけれど、きっと母親は今頃この辺りを探し回っているはずだ。
下手に連れ回さずに、しばらくじっとしていた方がいいかもしれない。
「えまちゃん、っていうの?」
「そうだよ! 五さいになったんだよ」
小さな手をめいいっぱい広げてこちらに見せてくる姿に、思わず笑みが零れる。
「えまちゃん。おねえちゃんと一緒に、ここでママ待ってみようか」
「うん! わかったぁ」
素直に返事をしてベンチに座ると、再び小首を傾げながら言った。