知らない明日が来たとしても
6.
 誰もいない日曜日の社内。
 才佳はキーボードを打つ手を止めて、大きく伸びをした。
 午前中、広告撮影の立ち合いがあったついでに会社へ立ち寄り、そのまま仕事を続けていた。
 休日出勤はあまり人事から推奨されていないが、自宅やカフェよりも休日の会社の方が集中して作業出来る気がする。
 週明けにある企画会議まで、出来るだけたくさん新しい案をまとめて持っていきたい。
 昼過ぎには到着していたけれど、気が付けば窓から夕陽が差し込み始めていた。
 もう少しだけ頑張ろうと作業を再開しようとした時、フロアのキーが解除される音がした。
 
 
「……暁」

 
 ドアの前に立つ暁が、才佳を見て目を見開いた。
 そして何も言わないまま視線を逸らし、自席へと向かう。
 スーツ姿で大きな紙袋を持っている様子から、暁も今日は外で立ち合いかイベントに参加していたのだろうと予想できた。

 
「また残業チェックでもしに来たの?」

 
 軽い口調を意識して声を掛けると、暁がこちらに背を向けたまま答えた。

 
「違う。もらった資料とか置きにきただけ」

 
 紙袋を机の上に置く重い音が、やけに大きく響く。
 二人の間の沈黙が怖いと思ったのは初めてだった。
 何も言えないままノートパソコンの画面を見つめていると、暁が大きく息を吐いた。


「――嘘だよ」


 そう言って、こちらへと向かってくる。


「本当はお前がいるかもと思って来た」


 隣に立った暁を見上げると、あの日と同じ切なげな表情を浮かべていた。
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