知らない明日が来たとしても


「……じゃあ俺は先に帰るけど、遅くなりすぎるなよ」

 
 体が離れて、暁がドアへと向かう。
 その後ろ姿を見送っていた時、彼の耳が少し赤くなっていることに気が付いた。
 
 
「……暁!」

 
 思わず呼び止めると、暁が振り返る。

 
「どうした?」
「その、まだうまく自分の気持ち言えないけど……でも明日も、これからもずっと、暁に会いたいって思う」
「……」
「それだけ今すぐ、伝えたくなった」
 
 
 驚いたように少し目を開いた後、暁は柔らかく微笑んで言った。
 
 
「俺もだよ」

 
 耳だけでなく、頬まで照れたように染まっているのが見えて、胸がきゅうと締め付けられた。
 きっと自分も同じ表情をしているのだろう。
 
 
「じゃあ、また明日な」
 
 
 そう言って、暁は去っていった。 
 一人きりに戻ったフロアで、才佳は再びノートパソコンへ向かう。
 
 愛していた人はもういない。幸せだった日々にはもう戻れない。
 それでも明日に進むことを、もう怖いとは思わなかった。

 他の案も今のうちに書き留めておこうと、新規作成ボタンをクリックする。
 才佳は姿勢を正し、真っ白な新しいページに向かってキーを打ち始めた。
 

 


 
 (了)
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