知らない明日が来たとしても
 
 
「今日は小田原(おだわら)さんのとこ、行かないのか」
 
 
 その名前を聞いた途端、胸が跳ね上がった。
 動揺を悟られないように鞄に手を伸ばし、身支度をしながら軽い口調で答える。
 
 
「急にどうしたの?」
「いや……いつも第二金曜だけは早く帰ってやるってうるさかったし。残業しないで新幹線乗る日だって言ってなかったっけ」
「あーそっかそっか、そうだよね」
「……何かあった?」
 
 
 デスクに片手をついてこちらを伺う暁に、才佳は笑いながら首を振る。
 
 
「いやいや何にもないよ。今月はちょっと予定合わなかっただけ。何かあったらすぐ暁に愚痴ってるし」
「……なら、別にいいけど」
「それよりさぁ、久しぶりにご飯行かない? この間駅前に出来たお店気になってて」
 
 
 立ち上がりドアへと向かう才佳の後を、了承したらしい暁が無言のまま付いてくる。
 暁は少し怖いと思うくらい、いつも察しがいい。
 ちゃんとごまかせただろうか。
 先ほどからうまく目を合わせられていないことに、どうか気付いていませんように。
 そう願いながら、才佳はフロアの電気を落とした。



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